指先で軽く彼の頬に触れてみた。
書物に落とされていた視線が、怪訝そうに持ち上がり、こちらを射る。 いったい何だ、と問いたげな顔。 察して、ルッカは答えた。 「意外にあったかいのね」 「……何を言いたい?」 「もっと冷たいのかと思ってた。ずっと」 「…………」 「でも、当たり前と言えばそうなのよね。同じ人間だもの」 「人間、か」 自嘲ぎみな声で呟く魔王に、ルッカは重ねるように言った。力強く。 「そうよ、人間よ。あんたが認めなくても、私が認めるわ」 「勝手にしろ」 「ま、要するにあれよね。あんたが顔色悪いのって、きっと不摂生なのよ。ちゃんと栄養と睡眠、とらなきゃダメよ?」 「…………。要らぬ世話だ」 そう言いながらも、眉間に深く刻まれた皺が心なし薄くなったように見えて、ルッカは小さく笑みをこぼした。 |