陽が入る宿の一室で、オレは、オレのせいで体調を崩してしまったマールの看病をしている。――『死の山』の環境の悪さとそれまでの心身の疲弊が、彼女に熱を出させたんだ。
水に浸した布をよく絞って折りたたみ、眠っているマールの額に乗せる。 もしかしてそれで起きてしまうかな、とも思ったけど、そういうこともないようで、マールは規則正しい寝息をたてたままだ。 (よっぽど疲れてるんだな……) 短いため息をついて、オレは隣のベッドに腰を下ろした。 「……ごめんな」 薄紅を帯びた横顔に、小さく呟く。 それは昨日も口にした言葉だった。 自分が『死んでいた』間のことは、みんなの話から想像するしかできない。 だけど、マールがどれだけ一生懸命になってくれたのかは、いくら鈍いオレだってわかった。 『もう遠くへ行っちゃあダメだよ』 死の山のてっぺんで、そう言ってオレの肩に顔を伏せて泣きじゃくってたマールは、なんだかやけに小さく、弱々しく見えた。もしも少し力を込めて抱きしめたら、壊れてしまいそうなほど。 もともと感情表現が豊かで、涙もろい性質だってのは知ってたけど。 あんな風に泣く彼女は、初めて見た気がする。 そして、そうやって泣かせてしまったのは、他でもない。……自分だった。 その事実に気づいた時、オレは謝る他、言葉を思いつかなかった。 我ながら大バカだと思う。 守りたいと思った相手に、逆に助けられて。 あげく、こんな寝込ませるようなことになるなんて。 これぐらいじゃ、罪滅ぼしにもならないだろうけど…… せめて、面倒みるぐらいはさせてくれよな。 |