白く細い、機械や銃を扱うにしては繊細な指先が、小さなドライバーを握り、油で汚れるのも厭わずに、せわしなく動いている。
ロボのメンテナンスをするルッカの瞳は、この上なく真剣だ。 ほんの小さな不具合が、のちに重大な欠損をもたらすこともある。 『そんなところも人間と一緒なのよ』と、彼女は以前、言っていた。 頬に落ちかかる髪を時折うるさそうに払いのけ、耳に掛けては手元に集中する。 そんな仕草のひとつひとつを、僕は、作業を手伝いながら ―― と言っても、ただ、邪魔になるコード線を押さえててちょうだいと頼まれただけだったりするけど ―― 目で追っていた。 ……と。 「……ちょっと、クロノ! 聞いてるの?」 「え? ああ、何?」 「今度はこっちを押さえてって言ってるの」 ルッカは手にしたドライバーで別の束を示した。心なし、口調が不機嫌そうだ。 「まったく、ボーッとしてばかりいるんだから。コードを押さえてるだけなんだから、人の話ぐらいちゃんと聞きなさいよね」 ―― 確かに、ルッカの言う通りだと思う。 でも、それには理由があるんだ。 僕はちょっと笑って、言った。 「ごめん。ルッカに見とれてた」 「なっ……」 ルッカは口をパクパクさせると、瞬時に真っ赤になった。 「バ、バカな言い訳してるんじゃないわよ!! ……ほら! さっさと押さえなさいってば!」 「はいはい」 ……言い訳じゃなくて、本当のことだったんだけどな。 でも、それを口にしたら、さらにルッカが怒りそうな気がしたから、やめた。 そして、僕は言われた通りにして。 耳を染めたまま作業に戻るルッカを、また、見つめる。 のどかな昼下がりの、他愛ないやりとり。 ―― 僕の好きな風景。 |